忘れていた感覚が、息をする。

Still

見え方がゆるむと、世界が味方になる

    自然の中へ行くときは、できるだけ裸眼で行くようにしている。

    もちろん、くっきり見たい景色もあるけれど、その中に佇んで自分のあらゆる五感を使って、その内側にひそめるとき、視力の悪い私の目の前には、幻めいた世界がひろがる。

    緑が丸くみえてくる。

    輪郭を失ったぼやっとした世界は、すべてが曖昧で、どこか許されて、包まれていく感じがする。
    母親の胎内も、こんなふうだったのかな。

    見上げると「なにもない」が戻ってくるようだ。
    私が唯一、視力が悪くてよかったと思うひととき。

    ピントの外側の世界は、こぼれた気持ちの行き先。
    きっと丸い世界だ。

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