
どうやら私は、自分の中にない言葉を紡ぐのが、少し苦手なようだ。
波が岸に寄せては離れるように、自分の中にある感覚を迎え入れてあげないと、言葉は、私のもとから離れていってしまう。
誰かの枠にあわせて書くことは、できる。
けれど、違和感を持ちながら言葉を探すとき、体が知らない間に緊張をまとい、重さを生み出してしまう。その重さの理由が、ようやくわかった。
それは、自分の中にうまく吸い込めないような言葉を、無理に連れてこようとしていたからだった。
けれど、湖の底に眠っている透明な記憶に触れるように、自分の内側にある言葉を探すとき、私は自然と前のめりになる。
湖畔で誰かの姿を思い浮かべながら、
「あの人は、こんな響きが好きかもしれない」
「きっと、この言葉を喜んでくれるだろう」
そう感じているうちに、言葉はすぐそばまでやってくる。
自分の内側で揺れている、水のような、空気のような何かを、両手ですくい取る。そうして、私の中に存在したものを届けることでしか、私はきっと、言葉を書き続けることはできないのだと思う。
私の中の静かな湖畔に、星の瞬きが降り注ぐ。
この場所で生まれる言葉は、いつも透明で、やわらかで。
私をおだやかに満たしながら、誰かのもとへと流れていく。
