忘れていた感覚が、息をする。

Scenes

青が揺れ、物語が始まるのを待つ

    枝の先で水をそっとつつくと、青がゆっくり揺れた。

    インク瓶にペンを浸す瞬間に似ている。

    水面に吸い込まれるように、カメラを構える。
    少しの風が吹き、レンズの向こうで葉っぱが光を拾ったり放ったりしている。
    ファインダーの中で、自分の呼吸が光の動きに合わせていくのを感じる。

    写真を撮るって、窓辺でコーヒーを味わうときのような、凛とした「構え」があるように思う。

    夜明け前の月みたいな光を、たくさん含んだ水面は、書きかけのノートみたいだ。
    まだ形にならない「言葉未満」の気持ちが、気ままに水面に浮かぶ。
    私は、あちこちに散らばっているそれらを、カメラで捉えようとしているのかも。

    言葉にならないまま、光は私のなかでひろがっていく。

    感じること、撮ること、書くことは、得体の知れない「ひとつ」になっていく。
    「感じたまま」をしばらく自分のなかに置いておくと、やがて思いがけない比喩となって姿をあらわすことがある。

    今は、自分の体と感性の奥で、ゆっくりと熟成させているとき。

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